神戸市会議員(神戸市北区選出)公式ウェブサイト
神戸港が抱える課題、そして「あるべき姿」について、神戸市会議員・坊やすながが、インタビュー形式で語ります。
―――神戸港エリアを歩いていると、コンテナを運ぶ貨物船や大型トラックの姿を見ることができます。神戸港は、海運の拠点として重要な役割を果たしているのだと思うのですが、そもそも日本における「海運」の重要性とはどのようなものなのでしょうか?
(坊)日本における国際的な物流は、重量ベースでは99%以上、金額ベースでも約7割が「海運」によるものなんです。日本の経済にとって「海運」の重要性は非常に高いものです。特に近年では、経済安全保障の観点からも、海を通じてきちんと物資が入ってくる状況をしっかり守っていくことが非常に重要な課題になってきているんですよ。
神戸港
―――つまり「海運」は日本経済を支える非常に重要なインフラだ、ということですね。いま、日本の 「海運」を巡る状況にはどのような課題があるのでしょうか?
(坊)国際的な海運においては、「国際基幹航路」と呼ばれる、アジア・欧州・北米といった地域間を、各地域の主要な港湾に寄港しながら結ぶ、国際海上物流の幹線として機能する航路があります。ところが昨今、こうした国際的な海運において、日本以外のアジアの港が存在感を高めている状況があります。これは、貿易立国である日本の経済にとってリスクとなるものです。したがって、国際基幹航路において、日本の港に寄港してもらう数量を増やしていくことが、日本の経済発展ならびに経済安全保障の観点からも非常に重要な課題となっているんですよ。
―――「国際基幹航路」という、重要な海運のメインルートがあって、その航路の中にしっかりと日本の港が位置づけられていくことが重要だ、ということですね。そのために、港としての魅力、国際競争力を高めていく必要がある、ということなのでしょうか?
(坊)そういうことなんです。神戸港を含む阪神港は、京浜港と並び、国際基幹航路における日本への寄港を増やしていくために重点的に国際競争力を高めていく、と定められている「国際コンテナ戦略港湾」に選ばれているんです。
神戸港
―――なるほど、神戸港は、日本の海運全体の中でも、最も重要な役割を期待されている「選ばれた港」なのですね。選ばれた港としての神戸港が、その魅力をさらに高めていくためには、どういった取り組みが必要になるのでしょうか?
(坊)大型のコンテナ船を受けいれることのできる港湾インフラの整備や、圧倒的な効率性で貨物の積みおろしができるような最先端技術の導入によるコスト削減、そして何よりも、積みおろしの対象となる貨物が神戸港の周辺に集積してある環境を作っていくことが重要なんです。
―――積みおろしの対象となる貨物が神戸港の周辺に集積してある環境を作っていく、とはどういうことでしょうか?
(坊)シンプルに言えば、神戸周辺に、モノを作る工場が集積していたり、モノを集める物流センターなどがきちんと整備されている、ということ。そして、そうしたモノを、神戸港との間でスムーズに運ぶことができるような交通インフラが整備されている状況を作っていく、ということですね。
―――なるほど、神戸港の国際競争力を高めていくためには、港湾機能を高めるだけではなく、神戸全体で海運を支えるインフラを整えていく必要がある、ということなのですね。
(坊)そういうことです。神戸は、北区にたくさんの高速道路(※)が集まっているので、交通のポテンシャルも非常に高いのです。こうした交通インフラを維持・発展させ、神戸港に西日本広域の貨物を集めて、国際コンテナ戦略港湾である神戸港から国際基幹航路を通じて世界各地へ送り出していく、そうした流れをしっかりと創りだしていくことが、日本の経済にとって非常に重要なテーマになっているんです。(※E2:山陽自動車道、E1A:新名神自動車道、E2A:中国自動車道、E27:舞鶴若狭自動車道、阪神高速(7号北神戸線+32号新神戸トンネル)、六甲北有料道路)
神戸港にて(2001年撮影)
神戸港にて(2024年撮影)
―――神戸港の国際競争力を高めていくことが、日本の経済にとって非常に重要であることはとてもよくわかりました。それでは、神戸港の国際競争力が高まることで、神戸の経済にはどのような影響があるのでしょうか?
(坊)まず、神戸の経済においては、「直接・間接的に、神戸港関連の仕事で生計を立てている人が、神戸市民の3割である」という点が重要です。神戸港の国際競争力を高めていくことで、神戸で暮らす人たちの生活を守り、豊かにしていくことにつながります。そして、それだけではないんです。神戸港の国際競争力を高めていくための取り組みは、北区を含む、神戸市全域の経済にもプラスの効果を生んでいくことになるんですよ。
―――それはどういうことでしょうか?さきほど、神戸港の国際競争力を高めていくための取り組みとして、「積みおろしの対象となる貨物が神戸港の周辺に集積してある環境を作っていくことが重要」というお話がありましたが、そのお話と関係があるのでしょうか?
(坊)まさにその話と関係があります。神戸市の、特に北区や西区においては、大規模な工場や物流拠点等の建設に適した場所がたくさんあります。しかしながら、現状では、都市計画の関係で、工場などを建てられないエリアがあります。結果的に、適切な利用がなされない「マイナス資産」となってしまっています。こうしたエリアにおいて適切な規制緩和を行い、「マイナス資産」を「プラス資産」に変え、神戸経済、日本経済全体の活性化につながるような用途での利活用を促していくことが重要です。
―――神戸港を強くするために、北区や西区などのエリアを含む神戸全体で変化を起こしていく必要があるということなのですね。そうした変化を起こしていくにあたっての課題はどのようなところにあるのでしょうか?
(坊)やはり、変化を起こしていくことになるわけですから、(規制緩和を行うエリアの)周辺住民の方の理解を得ることが一番重要です。それから、神戸市役所(行政)にも、「思い切った挑戦をしよう」という「やる気」をもってもらうことが重要です。そのために、政治家として一生懸命活動をしています。
―――規制緩和によって工場や物流拠点などの建設を促そう、ということになると、豊かな自然や農村風景への影響を気にする声も出てきそうですが。
(坊)現状では、兼業で農業をされている方がほとんどです。農業自体ではそんなに儲けられるわけではなく、兼業をしながら(農業以外の仕事もしながら)、田畑と家を維持されている方がほとんどです。したがって、農業以外の仕事が減ってしまい、農業以外の仕事が減ることで地域全体の人口が減り、学校やバスなどの公共交通も減っていってしまえば、地域に住みたい人、地域に住み続けられる人がどんどん減っていってしまいます。そうすれば、結果的に、美しい自然や農村風景を守る人がいなくなってしまうわけです。美しい自然や農村風景は、人が手を入れているから守られているのです。人がいなくなってしまえば、山に戻るだけです。
―――美しい自然や農村風景を守るためにこそ、変化が必要だ、ということですね。
(坊)そういうことです。20年後、30年後、それ以上先を見据えて、手を打っていかなければなりません。それが政治家としての使命だと思っています。
八多町の風景